健康管理情報

糖尿病の検査Ⅱ

1999年7月号
生活習慣病

糖尿病の合併症

糖尿病は、それだけで死ぬことはめったにありませんが、糖尿病で恐ろしいのは、進行した結果起こる合併症です。糖尿病は“万病のもと”といわれ、高血糖の状態が続くと全身に合併症が起こり、生命にかかわることもあります。

中でも次に挙げるものは、糖尿病の人だけにおこるので、糖尿病の3大合併症と呼ばれています。

糖尿病性網膜症

目の構造をカメラにたとえると、網膜はフィルムに相当する役割を果たしている部分です。ここには、たくさんの細い血管(毛細血管)が集まっていて、目に入った映像を正確にとらえ、脳に伝達しています。糖尿病で高血糖の状態が続くと、毛細血管の内側が詰まり、その先に血液が流れなくなって細胞が死んだり、血管がもろくなり破れて出血したりします。糖尿病の適切な治療を行わないと、網膜剥離がおこったり緑内障になったりして、失明することもあります。現在、わが国における途中失明者の70%は、この糖尿病性網膜症によっておこるといわれています。

糖尿病性腎症

腎臓の血管が障害されるため、血液を濾過して、体に不要な物質を排泄する働きが低下します。進行すると腎不全を起こし、透析による治療が必要となります。

糖尿病性神経障害

とくに足の神経が障害されます。病気が進むにつれて知覚が麻痺し、痛みを感じなくなります。そのため、小さな足の傷から、潰瘍を起こしたり、細菌が感染します。

その他、糖尿病の合併症として、動脈硬化や感染症にかかりやすくなることがあります。

糖尿病の予防法

糖尿病はある日突然発症するものではありません。長年の良くない生活習慣が影響しています。したがって、今までの日常生活の過ごし方を振りかえり、悪いところを改善していきましょう。

食事のポイント
  • 栄養のバランスの良い食事をする
    (ビタミン・ミネラルは特に必要)
  • 主食、主菜、野菜をきちんと摂る
  • 食物繊維を摂る
  • うす味に慣れる
  • まとめ食いは禁物
  • ゆっくりよく噛んで、1食15分以上かけて食べる
  • 外食は単品(丼物など)は避け、定食など品数の多いものにする
  • 朝食を十分に、夕食は控えめに
  • 水分を十分に摂る
  • 食事日記をつける
  • 間食を控える

 

1日の適正エネルギー量の目安
生活活動の強度
やや重
標準体重(㎏)×(20~25)kcal 標準体重(㎏)×(25~30)kcal 標準体重(㎏)×(30~40)kcal
歩行は1日に1時間程度。軽作業やデスクワークが中心の生活。 歩行は1日に2時間程度。 立ち仕事が中心の生活。
製造業、サービス業の従事者、小さな子どもがいる主婦など
重い肉体労働が1日に1時間程度。農業、漁業、建設業の従事者など。

 

  
運動のポイント

運動の効果

  1. 脂肪を分解し肥満を解消する
  2. ブドウ糖の摂り込みを活発にする

・ややきつい(息が少し乱れるくらい)程度の運動をする
・運動は続けて行う(15~60分程度、週3~4日継続させる)
・食後30分くらいに運動すると効果的

運動が血糖値を下げる仕組み
  1. インスリンが細胞膜にある「インスリン受容体」と合体すると、その刺激が「糖輸送担体」に伝えられる。
  2. 刺激を受けた糖輸送担体が、細胞膜に移動する。
  3. 糖輸送担体が、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む。運動をすると、細胞膜上の糖輸送担体の数が増えて、ブドウ糖を細胞内に取り込む働きも活性化するので、血糖値が下がる。

その他にも糖尿病の予防に気をつけるべき点として、次のようなことがあります。

睡眠を十分に取る
精神的、肉体的ストレスをためない

来月のテーマは、「糖尿病の検査Ⅱ」です。