未来へつなぐ健康対談

アスリートと考える健康管理 Vol.2
田中雅美 × 健康

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会では健康社会の実現に向け日々さまざまな活動を行っております。皆様の病気予防・健康管理への意識・興味を高めていただくために、今回さまざまな分野のアスリートの方々と健康管理について考える対談をシリーズ化して皆様にお届けすることとなりました。

第2弾は、シドニーオリンピック400mメドレーリレー銅メダリストで、現在はスポーツコメンテーター・タレントとしてテレビ等様々な分野で活躍されている田中雅美さんをお招きして「アスリートと考える健康管理 Vol.2」をテーマに対談を行いました。

田中雅美

田中雅美

田中雅美

1979年1月5日生まれ。北海道遠軽町生まれ岩見沢市育ち。
元水泳日本代表、オリンピック銅メダリスト。
競泳平泳ぎの日本代表として、アトランタ・シドニー・アテネとオリンピックに3大会連続出場。シドニー大会では400mメドレーリレーにて銅メダルを獲得。
2005年の現役引退後は、現在はスポーツコメンテーターとしてメディアに出演するほか、講演会、トークショーや全国で水泳講師を行うなど幅広く活躍している。
また、映画出演を機に、ドラマ、声優、舞台と役者の世界に足を踏み入れるなど、常に挑戦を続ける。最近は投球練習にハマっている。

profile
佐野虎

佐野虎

佐野虎

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 理事長
『健康社会の実現』のために、予防医学・健康管理の知識と意識の普及活動を行う団体。
官庁・自治体・企業 などと連携した『健康セミナー』の実施、小学校と連携した『食育』活動にも注力。
正しい健康知識を普及する人材、『健康管理士』 『文部科学省後援 健康管理能力検定』の認定も行う。

profile

“世界で戦うトップアスリート“の健康管理
~コンディションを作る食事やメンタル~

佐野:「田中さんは、オリンピックに平泳ぎ日本代表として3大会(1996年・2000年・2004年)出場されていますが、なぜ、日本の競泳は世界で戦えるレベルにまで成長出来たのでしょうか?」

田中:「選手全体の意識が変わったのが2004年のアテネオリンピックでした。当時、北島康介選手が金メダルを獲得したり世界記録を生み出す事によって、世界で戦うことへの意識がより芽生えたのだと思います。特に日本は、チームビルディング(強い組織を構築していくための手段)を大切にしています。
例えば、年齢や種目も違う選手があえて一緒にミーティングをやったり、1つの課題に対してチーム全体で向き合っていくなど、全員で良い雰囲気を作ろうという意識が大きかったと思います。100分の1で順位が変わる種目なので、お互いを尊重しながら水泳界全体のレベルも上がっていきました。」

佐野:「チームとしてメンタル面を支え合うことで厳しい世界でのレベルアップにつながったのですね。自己ベストが出る時のコンディションはどんな感じですか?」

田中:「正直レースになってみないとわからない事の方が多いです。例えば、ウォーミングアップの時に手応えを感じたとしても、レースになった途端感触がガラっと変わることがあります。脳で考える前に体が動く事もあるのでそのバランスを保つことが難しいですね。
一方モチベーションに関していえば、有難いことにオリンピックでメダルを獲得した中村真衣選手や岩崎恭子選手始め、日本代表に選出あるいは日本記録を持っている選手と常に一緒だったので、その環境は有難かったですね。」

佐野:「そうなんですね。やはりそのような緊迫した状況で力を出し切るためには、日頃の食事管理やメンタル管理などの健康管理の積み重ねがつくっていく部分も大きいですよね。
そのためのモチベーションが中村真衣選手や岩崎恭子選手との練習環境だったとのことでやはり世界レベルの環境ですね。
現役時代のコンディションの作り方について伺いたいのですが、試合で勝つための体づくりとして食事はどのように気を付けられていましたか?」

田中:「食事の摂り方とトレーニング方法を見つけることは重要なのでかなり意識をしていました。選手によっては成長期に体型の変化で悩んでしまったり痩せすぎが原因で食事を上手く摂れない選手もいたので。特に競泳に関しては体が大きくなればなるほど水の抵抗も大きくなる、つまり脂肪と筋肉のバランスがとても大切になります。私は常に練習前後に体重計に乗って、食べすぎによる体重過多であれば食事でのコントロールをしていました。
一方で体重が増えた原因が筋力ならば、推進力に繋がるので記録が伸びます。成長過程に合わせた泳ぎのテクニックと練習量と食事の摂り方、全てのバランスをどう保つのかコーチと共にコントロールして行くことが重要ですね。」

佐野:「アスリートは食べることも仕事の一つと言いますよね。特に女性アスリートでは成長期には脂肪のつき方が変わってくるので体系維持やホルモンバランスとの付き合い方が難しいですよね。
栄養素の役割をきちんと理解していないと、体重を減らすことだけを考えて糖質のみを減らしてしまうことになったり…。」

田中:「そうですね。実は食事量を減らしてトレーニングに力を入れるとオーバーワークで体のエネルギーが枯渇して自分の筋肉をエネルギーに変えてしまうんです。そうなると練習メニューをこなせなくなってしまうので、オーバーワークにならないように食事と運動のバランスを意識していました。
実は以前アジアで行われた大会で、現地の食事が全く口に合わず食べられない事がありました。翌日オーバーワークになり、帰国後のトレーニングもうまくいかなかった経験があります。」

佐野:「なるほど。海外に行かれることも多いトップアスリートの方は、海外での食事も気を遣いますよね。メンタルに関してはいかがでしたか?例えば前日に嫌な出来事があると色々と考えてしまいますよね。」

田中:「多分、そういうことで感情が左右されていたら世界で戦うのは難しいかもしれません(笑)でも時々自分自身の可能性を信じられなくなることがあるんですよね。不安で一杯になってしまうことは私自身もありました。」

佐野:「そうですよね、世界で戦うには小さなことには左右されないメンタルをお持ちかと思いますが試合直前の緊張状態は当然ストレスになりますよね。
ストレスを感じると体は思うような動きにならないかと思いますが、田中さんは試合前どうコントロールされていましたか?」

田中:「直前にメンタルをコントロールするのは難しいので、練習時からトレーニングを行っていました。良いイメージを頭で思い描くことが最高のパフォーマンスに繋がると思うので、私は30日前から大会での活躍をイメージしていましたね。
例えば、練習時に一度頭の中でタイムも含め完璧に泳いでいるシーンをイメージする、それを毎日少しずつ積み重ねていくと自信に繋がるのではないかなと思います。
でもメンタルに関しては結構悩んだタイプでした。そんなに強いタイプでもなかったですし、常にネガティブなことを考えるので。やはり世界でメダルを取る選手たちは自分のスタイルを貫いていますよね。」

田中雅美様 対談写真

アスリートでも陥った?!
現役引退後の不健康な生活が及ぼした身体の不調

佐野:「その業界すべてにおいて活躍している人は自分の考え方をしっかり持っていますよね。その後2005年に現役を引退されましたが、引き続き健康には気を付けていらっしゃいましたか?」

田中:「その逆で不健康バンザイ!と思っていました(笑)アテネのレースが終わった瞬間に今までのストイックな生活から離れて不健康な生活を送りたいと思ってしまい、食べない・動かない・夜更かしの3つを徹底していました。友人と夜お酒を飲みに行く頻度も増えましたね。
その生活を2年ほどやってみたのですが、体内の血液がドロドロになっていく感覚がありましたし、その後体調不良を起こしました。20代半ばでむくみが全く取れない、朝の目覚めが悪いなど様々なトラブルが起きましたね。」

佐野:「元々ギリギリの体重コントロールのため厳しい生活を送られていたでしょうから、尚更身体の不調を感じられたのではないでしょうか?」

田中:「感じましたね。しまいにはヘルニアの一歩手前までいきましたから。あわてて病院に行ったら医師に『体幹のバランスが崩れているので運動をしてください』と言われて(笑)その時に、見た目の美しさだけを追求しても全く意味がない、体の内側が健康でないとダメなのだという事を実感しました。
そこから気持ちを入れ替えて、運動と食事のバランスを考えるようになりました。特に食事に関しては毎日食べたものを全て書き出していましたね。そうするといかに食事の偏りがあるのか目に見えて分かりますし、書くことによって自分自身がより意識をするようになるので体重管理にもつながります。あとは毎日体重計に乗ることも大事ですね。」

佐野:「本当にそうですよね。本物の美や健康というのは内側が整っていないと実現しないことです。ご自身の経験を通して身をもって体感されたんですね。
現在、健康に関する取り組みは何かされていらっしゃいますか?」

田中:「食事に関しては、2日ないしは3日間のトータルバランスを意識しています。例えば友人とランチに行ったり焼肉やお寿司を食べに行った日は、翌日野菜を多めに取るようにしていますね。毎朝フレッシュスムージーを作るのは苦手なので(笑)とにかく無理のない範囲で長く続けるというのがテーマです。

運動に関しては週に一回ジムに通い体の使い方を意識するトレーニングを行っています。実は陸上の運動が苦手でして(笑)走る・ボールを投げる・ボールを蹴る・縄跳びなどは苦手の分類に入ります。現役時代は陸のトレーニングも沢山やりましたが、今は特に体感バランスを意識したメニューを行っています。」

田中雅美様 対談写真

2児の母親として経験した食事の失敗談
~家族の健康を通して学んだこと~

佐野:「そうなんですね。田中さんにも苦手な種目があるとは意外でした(笑)
やはり、食事のバランス、運動のバランスを知ることが大切ですね。
現在は2児のママでもありますが、妊娠中食事に関しての悩みがあったとか?」

田中:「実は1人目を妊娠したのが38歳の時なのですが、炭水化物は子供の栄養になると勝手に思い込み、毎日おにぎりを沢山食べていました。そしたら妊娠糖尿病になりまして…。幸いにも子供は比較的小柄で健康との事だったので、全て私の栄養になっていたらしく先生に注意を受けました。
そこから毎日食前食後に血糖値をチェックし提出をしていたのですが、その時にまた一つ健康について学びました。妊娠したからと言って必要以上に栄養素を摂って良いわけではないということを。2人目を妊娠した時は極力糖質は控えて、ビタミンやミネラルなどバランスを意識した食事を心がけたところ、妊娠糖尿病にはならず元気に生まれてきてくれましたね。」

佐野:「妊娠時の食事管理は特に難しく、大切ですよね。それまで特に意識していなかったから妊娠して何を食べたらいいかわからないという方も多くいらっしゃいます。
もともと血糖値が高いわけではなかったんですよね?」

田中:「そんなに高いタイプではないのですが、父が血糖値が高いので薬を飲んでいます。以前主治医に、妊娠糖尿病になる方は年齢を重ねたときに糖尿病になる可能性があるので気を付けてくださいと言われ、またその時に発見がありました。根拠なく健康体だと過信していた部分があったので。」

佐野:「根拠なく健康体だと思い、予防ができていないというケースはとても多いですよね。
糖質に関して言うと、以前流行った糖質制限ダイエット。糖質を食べなければ何を食べてもいいという方法ですが、やはり糖質はエネルギーですので徐々に血管や筋肉がボロボロになって血液が汚くなっていく。終いには死を招く恐れのある病気に繋がってしまうかもしれないというリスクが生まれます。とり過ぎもとらなさ過ぎも良くない影響を及ぼすのです。
そういう意味ではきちんと健康の知識を持って自分の身体に向き合って長く健康でいられるような生活スタイルを持つことが大事ですよね。」

田中:「まさに去年、父が大腿骨を骨折して数カ月入院をしたのですが、秋口には母が 大動脈解離で倒れました。母はまだ現役で水泳のレッスンをしているんですね。どちらかと言えば運動をしていて健康なはずだったので、いきなりプールで倒れた時には驚いてしまいました。
自分もいつ何時そうなるかわからないので気を付けなければいけないなと。やはり健康寿命についてもっと向き合わなければいけないなと思いました。」

佐野:「瞬間的に健康になることは簡単ですが、長く健康でいることって難しいですよね。10年間少しでも食事に気をつけるのか、何も考えずに10年を過ごすのか。その10年後は間違いなく差が出てくると思うんですね。
根拠なく自分は健康でいられると思うのではなく、少しの積み重ねが健康な体を作るのだと自覚を持つことが必要ですね。ちなみに、睡眠に関してはいかがでしょうか?」

田中:「そうですね。今まだ小さい子供が2人いるので睡眠に関しては継続してとれていない状況ですが、主人のサポートもあるので心のストレスという面では感じていません。」

佐野:「睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠のリズムがありますので、浅い眠りのレム睡眠時に途中で覚醒してしまうんでしょうね。
育児中の睡眠に関する問題は尽きませんが、ご主人のサポートのもと大きなストレスになっていないのは素晴らしい環境ですね」

田中:「例えば、担当しているレギュラー番組が朝なので起床時間が3時なんですね。前日は寝かし付けと同時に寝るので22時から23時くらい。まだ下の子がミルクを飲んでいるので深夜1時くらいに一度起きてまた寝るのですが、全然眠れない時もあります。体がだるい状態で仕事に行くこともありますね。
幸いにも主人が協力的で家事なども率先してやってくれるのでとても感謝しています。ストレス解消法を自分の中で見つけておくことも大切かもしれないですね。」

田中雅美様 対談写真

内側の健康が美を作り出す
~いつまでも美しい“田中雅美流”美の秘訣~

佐野:「最後に、いつも若々しいお姿をマスメディアを通して拝見しておりますが、田中さんの美という面でのこだわりや考え方を聞かせてください。」

田中:「やはり食事ですね。普段から意識的に野菜を多めに摂るようにしています。何度も言いますが栄養素のバランスをしっかり考えて食べることですね。
あとは過去が一番良かったと絶対に言わないようにしています。常に今が一番いいと思っていたら明日もいいと思える考えなので、今が一番幸せだと思うようにしています。40代なりの魅力が沢山あると思うので(笑)」

佐野:「今が一番いいと思うという考え方はとても素晴らしく参考になります。
大変興味深いお話を、ありがとうございました。」

田中:「こちらこそ、ありがとうございました。」

田中雅美様 対談写真

~まとめ~

トップアスリートとしてオリンピックでのメダル獲得経験もお持ちの田中さん。食事管理やメンタルの管理などトップレベルでの健康管理が基盤となって、コンディションを作られていたことが今回の対談から良くわかりました。
引退後の意外な生活習慣からの失敗談なども伺うことができ、どんな人にも健康管理は欠かせないことであると改めて痛感しました。
また現在まで多くのマスメディアでもご活躍されている田中さんですがその美と健康の秘訣にはとても素敵な信念があったことも教えて頂き、美や健康を普及していく身としてとても参考になるお話でした。

次回は、ロンドンオリンピック100mハードルで日本勢初の準決勝進出、2020の東京オリンピックにも出場された木村文子さんをお招きして対談を行います。

コーディネーター・文責 / 和田奈美佳

コーディネーター・文責 / 和田奈美佳

フリーキャスター。
健康管理士、健康管理能力検定1級、日本成人病予防協会認定講師。