健康管理情報

出血 ~鼻血~ -気になるからだの危険信号-

2001年12月号
更新)
気になるからだの危険信号

鼻血が出る

鼻血は誰にでも起こるごく一般的な症状です。
転んだり、人とぶつかったりして鼻を打ったときには、簡単に出血が起こります。

また、血友病や白血病、高血圧や肝硬変、腎不全など全身の病気がある場合や、狭心症や筋梗塞の患者さんやペースメーカーを入れている人が服用している「ワーファリン」などの抗凝血薬の影響で、鼻血が出やすくなることもあります。

その他には鼻や副鼻腔、咽頭の腫瘍による鼻血や、女性では月経時に鼻血が出やすいこともあります。

鼻血が命にかかわることはまずありません。しかし、大量に鼻血がでたり、繰り返すときには、一度耳鼻咽喉科で調べてもらいましょう。

キーゼルバッハ部位からの出血

鼻血の90%は小鼻の内側にある鼻中隔のキーゼルバッハ部位というところから出血しています。キーゼルバッハ部位の粘膜には、血管が網の目のように走っていて、ちょうど傷がつくと出血が起こります。この出血を止めるには小鼻をつまんで圧迫するほうが、なによりも簡単で効果的です。

 

鼻血が出たときは

まず、落ち着くことが大切です。顔面からの出血なのでうろたえてしまうことが多いのですが、あわてず、次のような止血法を行います。

①座って少しうつむいた姿勢で安静にし、親指と人差し指で小鼻をなるべく上のほうからぎゅっとつまみます。

5~10分間押さえていれば、普通はこれだけで出血は止まります。

 

②鼻血が出ると、よく脱脂綿を詰めたりしますが、鼻の入口に軽く詰めただけでは、少し奥のほうにある出血部位を圧迫できず、止血できません。

脱脂綿を詰めるようであれば、できるだけ長めにして奥のほうまでしっかり詰め、キーゼルバッハ部位を圧迫するようにします。さらに小鼻をつまむように圧迫すれば、止血効果があります。

③出血しているときに頭を低くするのは間違いです。
頭を高くしたほうが、血液が足のほうに流れていき、血が止まりやすくなります。外傷があるときに傷口を高くしたほうがいいのと同じ原理です。

寝かせたほうが患者さんが落ち着く場合には、枕や座布団などで頭の位置を高くし、顔は横向きにして寝かせます。

出血量が多い場合、あお向けに寝ていると血液が喉に流れていき、飲み込んでしまい、気持ちが悪くなったり、血圧が低下する原因になります。また、後頭部をたたいても止血の効果はありません。

鼻血が出たときは、あわてて病院に行くよりも、まずこの止血の処置を行うことが大切です。その上でしばらく様子をみて、耳鼻咽喉科で診察を受けるようにしましょう。

主な原因
①循環器の障害

高血圧や動脈硬化などの循環器系の障害があると血圧が高いためにキーゼルバッハ部位から出血しやすくなります。この場合の鼻血は粘膜からの出血で脳出血などとは直接関係ありません。

鼻血が出たときは、あわてず精神的に落ち着くことです。血圧が上昇しているとなかなか出血はとまりません。落ち着くことによって血圧も安定し、止血しやすい状態になります。

また、入浴や飲酒は、血管を拡張させたり、血圧を上げて出血しやすくさせるので控えましょう。

高血圧や動脈硬化の人で注意しなければならないのは、突然に大量の出血が喉からある場合があり、これは鼻の奥のかなり太い動脈の破綻によるもので、救急外来で専門医の処置が必要になります。

②環器の病気以外

腎臓病、肝臓病の人も鼻血を出しやすい傾向にあります。また、白血病、血友病、血小板減少症などの血液の病気でも鼻血が出やすくなります。これらの病気がある場合には全身症状があるはずですし、皮膚に斑点が出たり、歯ぐきから出血があるはずです。

たびたび鼻血が出たり、鼻血が止まりにくいということに加えてこういった症状があるようなら、内科で診察を受けて何が鼻血の原因になっているかを調べなければなりません。

③風邪による

風邪などで鼻に炎症が生じると、粘膜は充血した状態になっています。そのため、ちょっとしたことでも鼻血が出てしまうのです。特に風邪などで鼻づまりを起きると、鼻をほじったり、強く鼻をかんだりすることがあります。そういったことも、キーゼルバッハ部位を傷つけ、鼻血が出る原因になります。

風邪をひいた時に鼻血が出やすくなるのはごく当然のことですから、特に心配する必要はありません。風邪をひくと鼻血が出やすい人は必要以上に鼻をほじらない、強く鼻をかまない、ということを守ってください。

風邪の他に、鼻炎、鼻中隔湾曲症(※1)、アレルギー性鼻炎などでも、鼻の粘膜が充血し、鼻血が出やすくなります。

※1 鼻中隔湾曲症:
鼻中隔が曲がっている病気で、日本人には多い。鼻づまり、副鼻腔炎、蓄膿症などの原因になることがあります。曲がりの程度が強いと、湾曲側に鼻血や鼻づまりが起こりやすくなります。

キーゼルバッハ部位以外からの出血

鼻血のほとんどは心配のないものですが、鼻の周辺に重大な病気があり、それが原因になって出る鼻血もあります。

上顎がん

副鼻腔の1つである上顎洞から発生するがんですが、腫瘍のあるほうの側だけが鼻づまりを起こし、血液の混じった悪臭のある鼻水がたびたび出ます。

通常の鼻粘膜からの出血ではないので、前に述べた小鼻をつまむ止血法では止まりません。おもに中年以上にみられる病気です。


上咽頭(鼻咽腔)繊維腫

思春期の男性にみられる腫瘍です。
この病気があると、鼻の奥のほうから大出血することがあります。

これらの出血はいずれも止まりにくく、たびたび出血するのが特徴です。このような症状が現れた場合は、耳鼻科で診察を受ける必要があります。

頭蓋底骨折

頭部の外傷などで、脳を包み込んでいる頭蓋骨の底にあたる部分が骨折を起こしていて、脳脊髄液が血液とともに鼻からもれていることもあります。これは生命に関わる重大な症状です。頭を強打したときの鼻血には、注意しなければなりません。

頭蓋底骨折を起こしている場合の鼻血は、脳脊髄液が混じっているので、水のようにサラサラしているのが特徴です。透明な水様の液に少し混じっているような場合もあり、そのような時は脳脊髄液が鼻水のようにみえることがあります。また、鼻からの出血以外に耳や口からもサラサラした血液が流れ出ることがあります。

頭蓋底骨折が疑われる場合は、一刻も早く脳神経外科に運ぶ必要があります。
その前に鼻をかんだり、鼻の中に脱脂綿をつめてはいけません。鼻に栓をすると頭蓋内細菌感染として、栓をしたことによってそこから細菌が侵入し、頭蓋骨の内部に感染する原因になるので、水様の鼻血は流れ出るままにしておきます。

来月のテーマは、「出血 ~血尿~ -気になるからだの危険信号-」です。