健康管理情報

見た目、音 ~おいしさの秘密~

2011年10月号
更新)
おいしさの秘密

今月は、おいしさを引き出す見た目、音に注目します。

おいしく見える色、形

色は人の感情に影響をおよぼすため、食品の色は食欲にも影響します。
赤・橙などの暖色は開放感を与え、逆に青緑・青などの寒色は緊張感を与えます。
食品の色に対する好みは、年齢や性別、民族によっても違いはありますが、一般にオレンジや赤・黄の暖色系の色と、黄緑・緑などの中間色が食欲をそそる色として好まれます。
逆に、青・紫は食欲が減退する色として一般的にあまり好まれません。
民族による相違としては、たとえば日本では青が好まれず、アメリカでは黄緑や紫が好まれないという傾向があります。(日本では黄緑や紫は好まれ、アメリカでは青は好まれています。)
日本ではあまり見かけませんが、アメリカのケーキは、クリームを青く染色することも多く見られます。
逆を考えてみると、食欲を減退させる色ということは、ダイエットに活用できるという見方もできます。 食卓や食器に青を取り入れれば、ダイエットの効果が上がるかもしれません。

また、色がイメージさせる味というものもあります。 甘味はピンク、酸味は黄、塩味は無彩色、旨味はオレンジをイメージするということです。
他にも、色によって、肉や魚の色の変化、野菜や果物の色の変化など、新鮮さや食べ頃を判断できます。
場合によっては、表示された消費期限より、実際の色や匂いを頼りにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 
 

和食は、形も大切にします。 丁寧に料理する時には、人参などの根菜類の縁を削る「面取り」という作業をして、形と食べやすさを演出します。
野菜の飾り切りや食材の型抜きなども、食べる人の気持ちを楽しくさせます。
現在は、介護食でも、ミキサーですり潰さないと食べられないような高齢者のかたがた向けに、非常に柔らかく加工した食品や、形を再現したムース食など、見た目を重視した「形そのまま」の介護食が登場しています。
和食では、刺身、煮物、汁物の具など、多くの食材を元の形で残した物が多く、材料がわからない物は少ないです。
生ものはそのものの色を、煮たものでも多少の変化を計算に入れて、色と形を楽しんでいるのです。

  

おいしさと音

現在は、硬い食べ物はあまり好んで食べられてはいませんが、噛んだら音がするおせんべいや漬物、ナッツ類などは、かなり多く食べられています。
硬いものを噛んだ時の音や麺類などが喉を通るときの音、ビールや炭酸飲料の音も、時に快感を与えてくれます。
パリパリ、ポリポリ、ツルツル、シュワシュワなどといった「擬音語」は、食の感性の極致かもしれません。

この擬音語や擬声語、物音や動物の鳴き声をまねて作られた言葉を総称して「オノマトペ」といいます。
オノマトペは日常生活やマンガなどでも頻繁に使われている、日本文化の特徴のひとつです。
このオノマトペが発達した理由は、日本人が昔から、いろいろなものを食べてきたためです。

山野の木の実やイモ、草、そして海や川の魚介類と海草などの食べ物を採っていた頃から、諸外国からもたくさん食材が移入されました。その結果、今では世界一、食材が豊富な国になりました。
その豊富な食材を大切に食べてきたため、その色彩と共に、さまざまな食感を楽しみ、創造してきました。

それぞれの食感を表現するのに、多くの言葉を作ってきたため、日本語にはこのオノマトペが豊富なのです。
りんごやすいかのオノマトペである「サクサク」、はちみつや練乳のオノマトペである「とろとろ」という言葉に相当する西洋語を見つけることは非常に困難です。

 

他にも、食べ物を切ったり、煮たり、焼いたり、炒めたりした時の音、家族での楽しい会話、音楽(BGM)など、料理をする、ごはんを食べる時には、かならずおいしい音が出てきます。(食育でも重視されています。)
日本人は虫の音を楽しむように、食からも音を楽しんでいるのです。

来月のテーマは、「食欲 ~おいしさの秘密~ です。」です。