生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
みなさんは「甲状腺ホルモン」という言葉を聞いたことがありますか?甲状腺ホルモンは、甲状腺という内分泌器官から分泌され、新陳代謝を促進するなど体にとって欠かせないホルモンです。分泌量に異常があると、全身の不調を招きます。今回は、甲状腺とはどんな臓器か、また、甲状腺ホルモンに関わる病気にはどのようなものがあるかついて解説します。

甲状腺とは内分泌器官のひとつで、イラストの通り、首の前側、喉仏のすぐ下にあり、蝶が羽を広げたような形をしており、気管を抱き込むように存在します。
大きさは、縦が約4cm、重さが10~20gのとても小さな臓器です。表面はうすく柔らかい臓器であるため、首の辺りを手で触れても分かりませんが、甲状腺が腫れると手で触れただけでもその存在が分かるようになります。

甲状腺は、海藻などに含まれる「ヨウ素(ヨード)」を材料にしてホルモンをつくる働きがあります。そして、適切な量を調整しながら、血液中に分泌しています。また、余ったホルモンは蓄えることで、不足した時に必要な量が分泌されるように調整を行っています。ところが、甲状腺の働きに異常が現れると、そのバランスが崩れてしまいます。
甲状腺ホルモンは、からだ全体の「新陳代謝」を促進し、エネルギーの産生や体温、心拍数、自律神経などの調整をする、体のエンジンの回転数を調整するホルモンです。
摂取した炭水化物や脂肪などからエネルギーを作り出すことで、全身の細胞の新陳代謝を促進し、体を活発に動かすように働きかけます。また、脳機能の維持や交感神経を活性化し、心拍数を速めるなど、心臓の働きを調整しています。さらに、子どもの脳や神経の発達、骨の成長に重要な役割を果たしています。
甲状腺の病気は、男性に比べ女性に多く現れるという特徴があります。そして、病気には大きく2つに分けられ「甲状腺ホルモンの分泌量の過不足」によるものと、「甲状腺の一部が肥大する」ことによるものがあります。
過不足による病気の代表例が「バセドウ病」や「橋本病」で、全身に現れ、また精神的な症状にも似ていることから不定愁訴や自律神経失調症、うつ病などと他の病気に間違われることが多くあります。それに対して、一部が肥大するものに「甲状腺腫瘍」が挙げられます。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が過剰な状態であるため、エネルギー消費量が増えたり、心臓の動きが速くなるため動悸を感じる、体温が上がりやすくなる、神経が過敏になるなどの変化が起こります。これらの症状の総称を「甲状腺機能亢進症」といいます。
・バセドウ病※
・プランマ―病
・亜急性期甲状腺炎
・無痛性甲状腺炎 など
※原因は不明ですが、20~40代の女性に特にみられる自己免疫疾患。甲状腺を刺激する異常な自己抗体がつくられ、甲状腺ホルモンが過剰に分泌させてしまう。
甲状腺ホルモンが不足し、体の働きが全体的にスローモードになり、代謝が落ちた状態を指します。そのため、エネルギー消費量が減り、疲れやすくなったり、血液循環が滞りやすくなり、体温が低下しやすく、むくみやすい、体重増加、便秘などの症状が現れます。また、脳や神経の働きも鈍りやすいため記憶力や集中力の低下することがあります。
その他、気分が落ち込みやすい、無気力などメンタル面での症状が現れますが、自分では気づきにくいのが特徴です。これらの症状の総称を「甲状腺機能低下症」といいます。
・橋本病(慢性甲状腺炎)※
・甲状腺手術後
・ヨウ素(ヨード)の過剰摂取
・先天性甲状腺機能低下症(クレチン病)
・薬剤の影響
・放射線治療後甲状腺機能低下など
※自己免疫疾患のひとつで、自己免疫が甲状腺を攻撃することで、慢性的に炎症が生じ、甲状腺組織が少しずつ壊れていってしまう。
※通常、腫瘍があっても機能は正常に働きますが、一部でホルモン異常を伴うことがあります。また、しこりの約9割は良性で、多くの場合は無症状で経過観察が可能とされています。
甲状腺の健康を守るためには、特定の食品に偏らず、バランスよく多様な食品から栄養摂取をすることが基本です。それに加えて、甲状腺によい栄養素を普段の食事に取り入れて、甲状腺の健康を守りましょう。
橋本病などの甲状腺機能低下症の方で、「ヨウ素過剰により甲状腺が腫れている」と診断された場合には、医師の指示に従い、海藻類の摂取や昆布だしなどを控えることで改善することがあります。一方、バセドウ病などの甲状腺亢進症の方は、基本的に制限をされることは少なく、高カロリーなものや高脂肪食、カフェインやアルコールについては控えることがよいとされています。
いずれの場合にも、基本的には、栄養バランスの取れた食事を心掛けることが最も大切です。特に、代謝を助けるビタミンB群やミネラルを意識して摂るようにしましょう。食事制限は、個人の状態に合わせて、医師の指示に従いましょう。そして、あまり神経質になりすぎず、代謝に負担をかける糖質や脂質の摂りすぎやカフェイン、アルコール、唐辛子などの刺激物の摂取を控えるようにしましょう