生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
みなさんは「ハンタウイルス」という言葉を耳にしたことがありますか?最近、海外クルーズ船の中で集団発生したというニュースで、日本でもSNSなどで一時話題となりました。
今回は、『ハンタウイルス』とはどんなウイルスなのか、対策のために必要な知識を解説します。

ハンタウイルスとは、主にネズミなどのげっ歯類の一部が持っているウイルスの総称です。人が感染すると、急激に息が苦しくなる呼吸不全や、腎臓の機能が低下する病気を引き起こすことがあります。海外では重症化して命に関わるケースもあるため、世界的にはとても警戒されているウイルスです。
感染したネズミの排泄物が乾燥し、ほこりと一緒に空気中に舞い上がったものを、吸い込むことで感染します。海外では、長年放置されていた山小屋の掃除や、古い倉庫の片付けなどの際に入り込んでしまうのが代表的なリスクといわれます。
感染したネズミに噛まれたり、排泄物に触れた手でそのまま目、口、鼻などの粘膜に触れてしまったりすることで感染します。
ネズミの排泄物などで汚染されたしまった食べ物や飲み物を、誤って口にすることで感染することもあります。
感染してからしばらくは、風邪やインフルエンザに似た症状から始まります。急な発熱、頭痛、筋肉痛、全身のだるさなどが主なサインです。
残念ながら、現時点ではウイルスを直接退治する特別な薬やワクチンはまだありません。そのため、病院では少しでも体の負担や症状を和らげるために、酸素吸入や点滴を行う対症療法が中心となります。
なんだか怖い病気だなと感じるかもしれませんが、衛生環境を整えておくことで、十分に対策ができます。もしも身近にネズミの気配を感じたら、次のことを意識してみましょう。
ネズミがいそうな場所やフンを見つけて掃除をする時は、まず窓を開けてしっかりと換気を行いましょう。乾燥したフンをふい込んだり、直接触れたりしないよう、マスクや使い捨て手袋などを活着用すると安心です。

ここが一番のポイントです。フンを見つけても、ほうきで掃いたり掃除機をかけたりしてはいけません。乾燥したフンが粉々になって空気中に舞い上がってしまうためです。アルコール消毒液または、薄めた塩素系漂白剤を吹きかけ、十分に湿らせてから、ペーパータオルなどで包み込むように静かに拭き取りましょう。使い終わったペーパータオルや手袋は、ビニール袋に密閉して捨てるようにしましょう。

ネズミのエサとなるようなものを置きっぱなしにしないことが大切です。テーブルの上やシンクに食べ残しを置かず、生ごみは蓋付きのごみ箱にするまたは、直ぐに処理しましょう。さらに、食材はできるだけ密閉容器で保存することで、ネズミを寄せ付けない環境を作ることができます。

ネズミはコイン1枚程度の小さなすき間があれば、簡単に家の中に入り込むことができてしまいます。通気口や配管のすき間などは、金網や埋める粘土などを活用し、可能な限りふさぐことも非常に有効な方法です。
ここまでの話で不安になってしまった方もいるかもしれません。しかし、日本で普通に暮らしている私たちが、ハンタウイルスに感染するリスクは極めて低いとされています。その理由を3つご紹介します。
ウイルスをうまれつき持った「特定の野生のネズミ」は、南北アメリカや海外の一部の地域にしか住んでいません。日本の街中や家の中で見かけるネズミがこのウイルスを持つ可能性はまずありません。
ハンタウイルスは、基本的にインフルエンザや新型コロナのように、ヒトからヒトへは感染しません。そのため、海外からの旅行客や渡航者を介して、日本国内で流行がはじまるという心配は原則ありません。
家庭での対策でもご紹介した通り、食べ物などを放置せず、住環境を清潔に保ち、「普段通りの心がけ」が一番の予防策です。特別な薬がなくても、日頃の衛生管理だけで十分に対策できているのです。
海外のニュースを見るとドキッとしてしまいますが、病気の正体を正しく知れば決して慌てる必要はありません。もしこれから、海外旅行で大自然へ出かける予定のある方は、「野生のネズミには近づかない」と頭の片隅に留めておいてくださいね。