生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
皆さんは背中が痛いなと感じたら、どう対処していますか?原因が何か分からず、どの科にかかればよいのか、そもそも病院へ行くべきなのか、迷ってしまうこともあると思います。
そこで今回は、痛み方や痛む場所ごとに、原因となり得る病気をご紹介します。また、背中が痛いような気がしていても、本当は胃などの内臓や腰に原因がある場合もあります。そのため、痛みのある場所をしっかり確認しておきましょう。
まず、背中が痛い原因として、骨の構造に問題がある場合と、内臓に問題がある場合、筋肉疲労が問題となる場合が考えられます。病院に行く際は、骨や筋肉疲労は整形外科領域、内臓は内科領域となるため、それぞれ異なる科にかかる必要があります。

骨密度や骨の質の低下によって骨の量が減り、骨の内部がスカスカになって、もろく折れやすくなった状態です。閉経後の女性に多く、ふとんの上げ下ろしなど、ほんのささいなことで急に骨折しやすく、脊椎が骨折すると背中に痛みを感じます。
骨の成長が止まった後は、同じ骨がずっと同じ場所に存在しているような気がしますが、実は、骨は吸収と形成を繰り返し、絶えず生まれ変わっています。そのため、成人であっても骨を維持するために、1日当たり男性で750mg、女性で650mgのカルシウムが必要となります。補足になりますが、牛乳200mlに含まれるカルシウム量は220mgです。
また、女性は閉経によって、骨の吸収を抑えてくれるエストロゲンというホルモンが急激に減少するため、骨の吸収が閉経前よりも多く行われるようになり、骨密度が急激に低下します。閉経や老化に伴って、骨の吸収が強まり、また形成がうまく行われないことで、吸収と形成のバランスが釣り合わなくなり、骨の量が減って骨粗鬆症となります。


骨粗鬆症の人が骨折しやすい箇所を多い順に並べると、背骨、足の付け根、手関節、上腕となります。なかでも背骨は、潰れるように折れることで、背中が丸くなるため(後弯変形)、連なってまた骨折して(潰れて)しまう可能性が高く、寝たきりとなる恐れもあります。

食事編
薬剤編(医師の処方による)
日常生活編
運動編(治療中の人は医師と相談する)
化膿性の細菌が血流によって脊椎(背骨)まで運ばれることで感染し、背骨や椎間板(骨と骨の間にあるクッション)に炎症が起こる病気です。急性の化膿性脊椎炎には、腰や背中の激痛、高熱がみられますが、慢性の場合、痛みは比較的少なく、下半身に麻痺が起こることがあります。糖尿病の人や免疫抑制剤を飲んでいる人、人工透析をしている人、高齢者といった抵抗力の弱い人がかかりやすいです。また、感染した細菌が結核菌の場合は、症状の経過が異なるため、脊椎カリエス(結核性脊椎炎)として区別されます。脊椎カリエスは化膿性脊椎炎よりも背中の痛みは少なく、ゆっくりと進行し、微熱や体重減少が起こります。
脊椎に腫瘍が発生することで、腫瘍のある部位が強く痛み、安静にしていても痛みが引くことはありません。腫瘍には、脊椎自体から発生するものと、がんの転移によって起こるものがあり、転移による腫瘍の方が多くみられます。腫瘍が大きくなって脊椎の中を通る脊髄を圧迫すると、腕や足などに痛みが広がったり、麻痺が起こったりします。
背骨が化膿性の細菌に感染して炎症をおこす病気です。中高年に多く、糖尿病と合併している場合もあります。
脊髄とは脊椎(背骨)の中を通る神経の束のことで、外側から、硬膜、くも膜、軟膜という3層の膜に守られています。脊髄腫瘍は、硬膜の外に腫瘍が起こる(または外に移動する)硬膜外腫瘍、硬膜の内側かつ脊髄の外に腫瘍が起こる硬膜内髄外腫瘍、硬膜の内側かつ脊髄の内側に腫瘍が起こる硬膜内脊髄内腫瘍の3つに分けられます。腫瘍のある部位が背中の場合、背中の痛みや足のふらつき、転倒、尿が出にくいなどの症状がみられます。
骨には何の異常もありませんが、背骨のごつごつした部分(棘突起)に軽く触れただけで、強く痛みます。特に20代の女性に多く、痛覚過敏や、首から背中にかけての筋緊張、自律神経の乱れ、心理的ストレスなどが合わさって痛みが起こると考えられています。首から背中のこわばりや神経痛、しびれ、疲労感などの症状もみられます。

背中の痛みのほかに、次のような症状がみられる場合には、内臓の病気の可能性が高く、病名に見当がつけられます。

背中のほかに胸が痛む場合には、肺に関わる病気と心臓に関わる病気が考えられます。
肺の一部に穴があく気胸や、足の静脈などにできた血栓が肺の血管を詰まらせる肺塞栓症、肺炎、肺がんなどがあります。
心臓に酸素などを送る冠動脈が血栓によって塞がる心筋梗塞や、冠動脈が血栓によって狭くなる狭心症、心臓から全身に血液を送るための最も太い血管(大動脈)が裂ける大動脈解離などが挙げられます。特に、心臓の病気が原因となっている場合は、命に関わることもあるので、突然強く痛んだり、脈が乱れたりしているときは、迷わず病院へ行きましょう。

胃のあたりから背中に抜けるような痛みがあるときは、胃や膵臓、肝臓の病気が考えられます。特に胃と膵臓は、背骨のすぐ近くにあるため、痛みのある場所を脳が勘違いして、「背中が痛い」と感じることも多いです。
胃酸によって胃の粘膜が傷つく胃潰瘍や、胃の粘膜に炎症が起こる胃炎、胃がんが考えられます。胃がんは進行すると、みぞおちの痛みや吐き気、体重減少などとともに、背中に痛みが起こることがあります。
膵炎は膵臓に炎症が起こる病気で、飲酒や食事の後に痛みが起こることが多く、みぞおちから背中へ突き抜けるような痛みが特徴です。急性膵炎では、発熱やお腹の張り、吐き気を伴い、慢性膵炎では、下痢や体重減少を伴います。
胆石症(肝臓でつくられた胆汁という消化液を溜めておく胆のうという臓器の中に石のような塊ができる)の場合、背中の右側に痛みが広がり、脂っこい食事の後に痛みが強くなります。肝炎(肝臓の細胞に炎症が起こって肝細胞が破壊される)の場合、背中の右側の痛みや全身倦怠感、白目が黄色くなる(黄疸)、食欲不振といった症状があらわれます。

背中の痛みとともに、尿の濁りや血尿、発熱などがみられる場合は、腎盂腎炎が疑われます。尿道から侵入した細菌に膀胱が感染する病気は膀胱炎ですが、さらに細菌が腎臓まで到達して腎臓も感染した場合には腎盂腎炎となります。また、血尿や、片側の背中(腰)や脇腹に強い痛みがある場合は、腎臓結石の可能性があります。腎臓結石は、腎盂で形成されたカルシウムなどの塊のことで、結石が尿管へ移動すると痛みが起こります(尿管結石)。もし、背中の痛みのほかに、血尿や腹部のしこり、足のむくみがある場合は、腎臓がん(腎細胞がん)の可能性もあります。
重いものを持ったり、長時間無理な姿勢をとっていたりして、背筋が疲労状態になっている筋肉痛です。動かすと痛むのが特徴で、慢性的な痛みの場合は、温めると楽になります。
まずは、湯船に浸かって温めたり、マッサージをしたりして、筋肉を緩めましょう。そして、運動して背中の筋肉を鍛えたり、普段から姿勢を正すようにしたりして、痛みが起こらないように心がけましょう。
・今までに経験したことのないような激しい痛みを感じたとき
・冷や汗が出たり、脈が乱れたり、痛みが移動したりしていると
・息苦しさや、酷い咳があるとき
・発熱などの全身症状があるとき
・痛みが日に日に強くなっているとき
・痛みがお腹など、背中以外の場所まで広がっているとき
・黄疸や吐き気があるとき
・身長が4cm以上、縮んだとき
・常に同じ部位が痛むとき
・食事と痛みが関係しているとき
・背中と胸の痛みのほかに、左腕のしびれがみられるとき
ここまで、背中に痛みが起こるさまざまな病気をご紹介してきましたが、病院へ行くかどうか、どの科へかかるかといった判断の参考になれば幸いです。
来月のテーマは、「腰痛 -気になるからだの危険信号 痛み-」です。