生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会

鼻血は、何らかの原因によって鼻の内側の粘膜が傷つき、血管が破れて出血することで、誰にでも起こるごく一般的な症状です。
また、血友病や白血病、高血圧や肝硬変、腎不全などの病気によって鼻血が出たり、狭心症や心筋梗塞の人、ペースメーカーを入れている人が服用する「ワーファリン」などの抗凝血薬の影響で、鼻血が出やすくなったりすることもあります。
そのほか、鼻や副鼻腔、咽頭の腫瘍による鼻血や、女性は月経時に鼻血が出やすくなることもあります。
鼻血の90%は、小鼻の内側にある鼻中隔のキーゼルバッハ部位というところからの出血です。キーゼルバッハ部位の粘膜は薄く、たくさんの血管が網の目のように走っているため、少しでも傷がつくと簡単に出血します。
風邪やアレルギー性鼻炎などで鼻に炎症が生じると、粘膜は充血した状態になります。すると、ちょっとした刺激でも鼻血が起こりやすくなります。特に鼻づまりが起こると、鼻をほじったり、鼻を強くかんだりすることだけでもそうしたことが原因で、キーゼルバッハ部位が傷つき、鼻血が出ます。風邪をひくと鼻血が出やすい人は「鼻をほじらない」「鼻を強くかまない」ようにしましょう。
鼻中隔(鼻の穴を左右に仕切る壁)が曲がった状態で、日本人に多いといわれています。いびきや鼻づまり、副鼻腔炎などの原因になることがあります。大きく曲がっている部分の粘膜は薄く傷付きやすいため鼻血が起こりやすくなります。
高血圧や動脈硬化などの循環器系の障害があると、血管が傷つきやすくなっていたり脆くなっていたりするため、全身の血管から出血しやすく、鼻血も出やすい状態にあります。
次のような止血法を行います。
①椅子などに座って、少しうつむいた姿勢で安静にします。そして、親指と人差し指で、小鼻をなるべく上の方からぎゅっとつまみます。
通常であれば、5~10分間押さえていれば出血は止まります。

②鼻血が出ると、よく脱脂綿を詰めたりしますが、鼻の入口に軽く詰めただけでは、少し奥の方にある出血部位を圧迫できず、止血できません。
もし脱脂綿を詰めるようであれば、できるだけ長めにして奥の方までしっかりと詰め、キーゼルバッハ部位を圧迫するようにします。さらに小鼻をつまんで外側からも圧迫すると、止血効果が高くなります。

③頭を高くすると、血液が足の方に流れていくため、血が止まりやすくなります。外傷があるときに傷口を心臓より高くした方が良いことと同じです。
もし寝かせた方が落ち着く場合には、枕や座布団などで頭の位置を高くして、顔は横向きにしましょう。出血量が多い場合は、あお向けに寝ていると血液が喉に流れていき、飲み込んでしまうため、気持ちが悪くなったり、血圧が低下したりする原因になります。

鼻血が出たときは、あわてて病院に行くよりも、まず止血の処置を行うことが大切です。止血してしばらく様子をみてから、病院に行くか考えましょう。
鼻血が止まったあとは、また出血するおそれがあるため、血行が良くなったり、血圧が上がったりするような行動は避けましょう。熱いお風呂や長時間の入浴、飲酒、運動は控えてください。また、鼻をかんだりほじったりしないようにしましょう。
最も注意しなければならない鼻血は、頭を強打したあとに、水様の鼻血が出ている場合です。頭蓋底骨折が疑われるため、一刻も早く救急外来を受診しましょう。その際、鼻をかんだり、鼻の中に脱脂綿を詰めたりしてはいけません。鼻に栓をすると頭蓋内細菌感染といって、栓をした場所から細菌が侵入し、頭蓋骨の内部まで細菌に感染してしまうので、水様の鼻血は流れ出るままにしましょう。
頭の外傷もなく、上記の「鼻血の対処法」で紹介した止血法で血が止まり、鼻血を繰り返すことも無ければ心配はいりませんが、以下のような場合は病院の受診をおすすめします。
耳鼻咽喉科の受診
次の症状に当てはまる場合は、早急に耳鼻咽喉科を受診しましょう。
上記の止血法で15分以上血が止まらないとき
タオルが真っ赤に染まるような、出血量が明らかに多いとき
週に一度以上鼻血が出るとき
来月のテーマは、「出血 ~血尿~ -気になるからだの危険信号-」です。