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おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ってどんな病気?大人は重症化する?

2020年11月
更新)
感染症

子供の頃にかかったから大丈夫?「確か、かかった“はず”」は意外にもリスクが潜んでいるかもしれません。おたふくかぜは、大人になってからかかると重症化しやすいといわれています。

自分自身と周りの大切な人を守るためにも、この病気の特徴や、治療・予防法を正しく知っておきましょう。

  おたふくかぜ

おたふくかぜってどんな病気?

正式には、「流行性耳下腺炎」というもので、ムンプスウイルスの感染によって発症するウイルス性の感染症です。感染すると、耳下腺などの唾液(だえき)腺が腫れて、「おたふく」のように見えることから、通称「おたふくかぜ」と呼ばれています。

ウイルス

おたふくかぜの症状

まず片方の耳下腺が腫れ、その後70~80%の割合で反対側も腫れていきます。炎症部の痛みの程度はさまざまですが、特に酸っぱいものや硬いものを食べると、それらを飲み込む際に痛みが強くなります。そのほか、38度程度の発熱や倦怠感、頭痛などの症状がみられることもありますが、1週間くらいで自然に治ります。また、30%程度の人は感染しても症状が全く出ません。

なぜ頬や顎(あご)の下が腫れるの?

耳の下や顎(あご)の下には、唾液(だえき)腺があります。唾液腺で、ムンプスウイルスを排除しようとする免疫機能が働くため、炎症が起こります。その結果、唾液腺のある顔まわりが腫れて痛みが生じたり、発熱したりします。 一般的には、小学校低学年までの年齢で発症することが多い感染症です。一度感染することで生涯の免疫ができますが(獲得免疫)、なかには成人になってから初めて感染する人もいます。

おたふくかぜの発症部位

感染経路

主な感染経路は、「飛沫感染」と「接触感染」の2つです。

飛沫感染

感染している人が咳やくしゃみをしたり、感染している人と会話したりすることで、ウイルスの含まれた唾液などの飛沫を周囲の人が吸い込むことで感染します。飛散したウイルスが目の粘膜から体内に侵入して感染することもあります。

接触感染

感染している人とカトラリーやコップ、タオルなどを共用して感染するケースや、ウイルスが付着したドアノブや手すり、感染している人自身に触れた手で、口や鼻を触ることで、ウイルスが粘膜から体内に侵入して感染するケースがあります。体の表面についただけでは感染はしないため、石けんでのこまめな手洗いや、アルコール消毒を心がけましょう。

感染経路

かぜと似た比較的軽い症状が続く場合もありますが、ほとんどの場合はすぐに出ないことが多く、自覚症状がないために知らないあいだに、周りの人へうつしてしまう可能性があります。

潜伏期間と症状・合併症

潜伏期間が長い?

潜伏期間とは、病原体に感染してから体に症状が出るまでの期間、あるいは感染性を持つようになるまでの期間をいいます。おたふくかぜは、他の感染症に比べて潜伏期間が長く、潜伏期間は12~25日間(平均18日間)といわれています。

うつる可能性がある期間は?

症状が出始める1日前~5日後が最も感染力が強いとされているため、学校保健安全法では症状が出てから5日間は、保育園や学校などに登園、登校できないことになっています。一方、大人の場合は法律上、出勤停止の決まりはないため、会社ごとに規則を定めている場合があります。周りの人にうつさないように気をつけましょう。

大人が感染すると重症化する?

大人が感染した場合は、40度を超える発熱がみられたり、耳下腺の腫れや痛みが強くなったりすることも多く、腫れが酷いと、口を開けることも困難になるため、食事を摂れなくなることがあります。

おたふくかぜの合併症

他の感染症と比べて合併症が比較的起こりやすく、発症後数週間は、無菌性髄膜炎やムンプス難聴、思春期以降にかかった場合は精巣炎・卵巣炎にも注意が必要です。無菌性髄膜炎は、10%程度と比較的起こりやすいですが、後遺症が残ることはありません。一方、ムンプス難聴は、0.25%程度と少ないものの、片方の耳が全く聞こえなくなります。現在の医療では治療法がなく、完全に回復することは難しいとされています。ちなみに、無症状でもムンプス難聴になることがあります。

治療と予防

どんな治療法があるの?

もし感染してしまった場合は、特効薬などがないため、発熱や腫れた部位の痛みをとるために解熱鎮痛剤を服用したり、腫れた部位を冷やしたりといった対症療法を行うことになります。食事は、酸っぱいものや硬いものは避けて、柔らかいものや喉越しの良いものを食べるようにしましょう。おかゆやうどん、ゼリーなどがおすすめです。

予防するには?~予防接種~

特効薬が無いことや合併症のリスクがあることから予防が大切であり、予防に最も有効な方法が予防接種です。ムンプスウイルスの毒性を弱めた生ワクチンを2回接種することが有効とされていて、1歳を過ぎたら接種できるので、1歳(保育園などに入って集団生活を始める前)と小学校入学前に接種することが推奨されています。 ただ、ワクチンにも副反応のリスクはあります。ワクチンで副反応が起こる割合と、接種せずに感染して合併症が起こる割合とを比較すると、ワクチンで副反応が起こる割合の方が圧倒的に低いため、それほど心配する必要はありませんが、気になる場合にはかかりつけの医師などに相談してみてください。 現在、日本ではおたふくかぜの予防接種は定期接種項目に入っていないため(任意接種)、費用は基本的に自己負担となります。ただ自治体によっては、助成を行っているところもあるので、お住まいの自治体のホームページなどを確認しましょう。

予防するには?~感染対策~

人混みなど感染リスクのある場所ではマスクをつけたり、こまめに石けんで手を洗ったり、アルコール消毒をしたりするなどの基本的な感染対策が有効です。 一度かかると抗体ができて感染しにくいといわれているおたふくかぜですが、不規則な生活やストレスを多く抱えているときなど、抵抗力が落ちていると再度感染してしまうことも稀にあります。 日頃から、バランスの良い食事を摂って、適度な睡眠時間を取り、体内リズムを整えるなどして免疫力をあげておくことが大切ですね。

来月のテーマは、「海外渡航者(A・B型肝炎、黄熱、狂犬病) ~感染症~」です。