生活習慣病を予防する特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
寒くなってきて、外に出るとつい肩をすくめてしまう季節になりましたね。暖かい部屋にこもって運動不足になったり、着込んだ服で肩がこったりしがちですが、このような不安をお持ちではないでしょうか?
今回は、体を支える「筋肉」をテーマとして、筋肉の基本の知識から、こり固まった筋肉をほぐす方法までを特集してお届けします。
まずは、筋肉の基本から学習していきましょう!

身体を動かしたり、姿勢を保ったりするなど、身体の全ての動作で必要となります。
特に、加齢によって筋肉量が減ると、転びやすくなって寝たきりになるリスクが上がるため、筋肉量を維持することが大切です。
人間を含むほ乳類と鳥類には、恒常性(ホメオスタシス)といい、外気温が高くても低くても平熱を保つことができるしくみがあります。そのうち、筋肉は「熱産生」という代謝によって熱を生み出し体温を上げる働きを担っています。ちなみに、「熱放散」といって体温を下げる働きをしているのは「発汗」です。
血液は、重力に従って下半身の方に流れたあと、重力に逆らって心臓の方へ戻る必要があります。このときに、ふくらはぎの筋肉がポンプのように作用することで、血液を心臓まで戻すことができます。
食事で摂った炭水化物は、体内でブドウ糖に変化したあと、エネルギーとして消費されるか、グリコーゲンという貯蔵型の糖質になって筋肉や肝臓に蓄えられます。それぞれの糖の貯蔵量は、筋肉は約300g、肝臓は約100gで、筋肉に蓄えられた糖は運動時のエネルギーなどに使われ、肝臓に蓄えられた糖は、血糖値の維持などに使われます。
筋肉は、水分が約75%を占める構造になっており、糖だけでなく体内で最も多くの水分を貯蔵しています。そのため、加齢や運動不足などで筋肉量が減ると、体内に蓄えられる水分量も同時に減ってしまい脱水状態に陥りやすいので注意が必要です。
リンパ球やマクロファージ、好中球といった免疫細胞は、体内で合成できるアミノ酸の一種である「グルタミン」が重要なエネルギー源になっています。このように、グルタミンは免疫機能の維持に欠かせない成分であるため、通常筋肉や血液中に大量に貯蔵されています。しかし、風邪を引いたり怪我をしたり、過度なストレスがかかったりすると、グルタミンが多く使われ不足してしまいます。そのような場合には不足分を補うために、筋肉を分解してグルタミンを供給しています。そのため、筋肉量が少ないと、免疫機能を維持するしくみが働けず、風邪を引きやすくなります。
脂肪と同様に、内臓や骨などを衝撃から守る役割があります。
マイオカインは、運動によって筋肉が収縮する際に骨格筋から分泌されるホルモンです。マイオカインは650種類以上発見されていて、筋肉に直接作用するものと、血流に乗って全身に運ばれて作用するものがあります。前者は、筋肉の成長や修復を促進するものや、筋肉への糖の取り込みを増やして血糖値を安定させるものなどがあります。また後者には、炎症を抑えたり、脂肪を分解したり、血管新生を促したり、認知機能を向上させたりするなど、さまざまな疾患の予防に役立つマイオカインや、シミやシワを改善してくれるマイオカインなどが見つかっています。
私たちが身体を自由に動かすことができるのは、筋肉が存在するためです。
筋肉は、「骨格筋」「心筋」「平滑筋」の3種類に分けられます。
骨格筋は、主に骨についている筋肉であり、身体を動かす働きがあります。骨格筋は「随意筋」と呼ばれ、自分の意思で動かすことができます。
心筋は心臓を拍動させる筋肉です。不随意筋といって、自分の意志ではコントロールすることができず、自律神経の支配下で動く筋肉です。
平滑筋は、血管や消化管など、主に管状の器官の壁に存在する筋肉で、血管の収縮や胃腸の働きなどに関与しています。平滑筋も不随意筋なので、自律神経によって動く筋肉であり、エネルギーをほとんど消費しないため、疲れることがありません。
| 骨格筋 | 心筋 | 平滑筋 | |
|---|---|---|---|
| 所在 | 骨格 | 心臓 | 血管や内臓 |
| 機能 | 骨に結合して身体を動かす | 心臓を動かす | 血管、消化器官、子宮、膀胱などを動かす |
| 随意性 | 随意(自分の意志で動かせる) | 不随意(自分の意志では動かせない) | 不随意(自分の意志では動かせない) |
| 支配神経 | 体性神経 | 自律神経 | 自律神経 |
今回は、筋肉の代表格である骨格筋の構造を見ていきます。筋肉は、「筋束」と呼ばれる束が集まってできています。さらに筋束は、「筋線維」と呼ばれる長い線維が束になり構成されています。
この筋線維1本1本が、骨格筋の細胞に該当します。骨格筋は他の細胞と比べて長く、全長50cmに達するものもあります。
そして、筋線維の細胞質には、「筋原線維」と呼ばれるタンパク質の束が詰まっています。

筋肉はエネルギーを使い、「縮む」ことが使命です。ここからは、筋肉の収縮の仕組みについて詳しく見ていきましょう!
筋肉を収縮させる装置は、筋線維の中に存在する筋原線維です。筋原線維は、「太い線維」と「細い線維」の2種類が規則正しく交互に並んだ構造をしています。太い線維は主に「ミオシン」、細い線維は主に「アクチン」というタンパク質から出来ています。
筋肉を収縮させる信号が届くと、太い線維(ミオシンフィラメント)が細い線維(アクチンフィラメント)をたぐりよせ、2つの線維がスライドする仕組みになっています。
その結果、筋原線維全体が短くなり、筋肉の収縮が起こります。このように、骨格筋を自由自在に収縮させ動かすことで、私たちは歩いたり、物を持ち上げたりすることが出来るのです。

今回はここまでです!筋肉は奥が深いですね。
次回も引き続き筋肉の基本について学習していきましょう!
次回は、筋線維「遅筋・速筋」の違いや、「筋肉が大きくなる仕組み」について解説します!
来月のテーマは、「筋肉をもっと知ろう! ~筋肉の基本② 筋肉が大きくなる仕組み~」です。