ストレスについて

ー ストレス状態の兆候 ー

ストレス状態の兆候about

ストレスの傾向が分かったところで、ここではストレス状態にある時に現れやすい兆候の代表を挙げておきます。

ストレス状態の兆候

ストレス状態の兆候

  1. 全身症状疲れやすい、体がだるい、気力がわかない など
  2. 筋肉系症状肩がこる、首がこる、手足がだるい、関節痛、偏頭痛がする など
  3. 感覚器系症状目が疲れやすい、めまいがする、多汗になる、音に対して過敏になる など
  4. 睡眠障害寝つきが悪い、眠りが浅い、早く目覚め再び寝付けない、夢ばかり見て寝た気がしない など
  5. 循環器系症状心臓がドキドキする、胸が痛くなる、脈がとぶ など
  6. 消化器系症状食欲不振、胃がもたれる、吐き気・嘔吐、よく下痢をする、便秘になりやすい など

このような兆候が現れ始めたら、要注意!

まずは、自分がストレス状態にあると気が付くことが大切なのですが、自分で気が付くことはなかなか容易ではありません。周囲の人たちが変化に気が付くことが重要です。お互いに大切な人を守るための気配りが欠かせないといえるでしょう。

ストレスとの上手な付き合い方については、次の項で紹介します。

生体反応のプロセス

不快なストレスを感じたときに私たちの体に現れる変化をまとめると、

  1. 情動変化まず、不安、怒り、失望、恐怖などの感情が現れる。
  2. 身体変化次に、動悸、震え、息苦しさ、冷や汗などの変化が身体に現れる。
  3. 行動変化今度は、①②の変化を解消しようと、せかせかと行動したり、たばこやお酒を飲んで気を紛らわそうとするなど行動に現れる。
生体反応のプロセス

生体反応のプロセス

私たちには、上図のような生体反応プロセスが起こり、自己を守るための防御体制をとるようになります。

そして、ストレッサーがあまりに強力だったり長期的だった場合は、ストレスによって体に変調をきたしてしまうことや、その体内メカニズムなどを、これまでに紹介してきました。

次に、さまざまな症状となって現れる代表的な疾病を簡単に紹介します。

代表的疾病

心身症
心の病気ではなく、心が原因で体に起こる病気。つまり「心身症」とは、ストレスが身体化したもので、ある病気の成立や経過自体に、心理的・社会的な因子が密接にかかわって起こる体の病気のことです。
そのため、心身症として起こる病気は実にさまざまで全身のいたるところに現れます。「心身症」とはひとつの病気の名前ではないのです。人それぞれ現れる器官は異なりますが、本人の一番弱い部分に現れる説が有力と言われています。
心身症の原因となる心の問題は、「欲求不満」と「心理的葛藤」の二つが代表的です。
気分障害
気分障害」には、うつ病と躁うつ病があります。
代表的疾病であるうつ病とは、心や体の働きが極端に低下し日常生活に差し支えるような状態に陥る病気のことです。
うつ病にかかると、憂うつ、物悲しい、悲観的、イライラなどの強い抑うつ気分や、物事に対しての意欲の低下などが特徴的な基本的精神症状に加えて、 「睡眠障害」「食欲不振」の身体的症状がほとんどの人に現れます。
最も注意が必要なのは、初期や治りかけの時期に発作的に起こる自殺です。しかし、早期発見し適切な対応をとることにより完治できる病気なのです。
心理的刺激がストレスとなって起こることが多い病気と考えられています。
また近年では、上記に記載した「従来のうつ病(定型)」とは異なる特徴をもつ「非定型うつ病」が増えてきています。
非定型うつ病は、憂うつな気分はあるものの楽しいことに対しては一時的に気分が明るくなったり、過眠や過食の傾向があるといった特徴があり、20~30代の女性に多くみられます。 自己否定や自責の念は乏しく、他人に責任転嫁をしたりする傾向もあります。
不安障害」とは、ストレスが心に現れる影響で心身にさまざま症状を引き起こす病気で、以前は神経症と称されていました。
心身両面にわたり症状も多彩ですが、「不安」が中核にあるのが共通にみられます。
また、必ず精神的な悩みや葛藤などの原因があるのも特徴で、その原因となるものが、解消されれば自然と症状も治まることが多いといわれています。
単なる心配性との違いは、耐えがたいような極度の不安が終始つきまとい、日常生活や社会生活にも支障をきたすほど強いという点です。ひと月以上症状が続く場合は「不安障害」と考えてよいでしょう。
その人の生まれ持った素因(病気になりやすい素質)や性格に、ストレスやショックな出来事や経験が重なって発症すると考えられています。

ストレスによってもたらされる代表的な病を表に簡単にまとめましたが、それぞれの症状はかなり多彩でいくつかに分類されています。これらに関しては、また別の機会に症例を挙げながら解説することにしましょう。

しかしやはり、いずれの場合も本人が自分の異常に気付かないケースがほとんどでしょう。周りから見て「最近何か様子がおかしい」、「異様な印象を受ける」などと感じたら、なるべく早く受診をすすめることも必要です。心の病には、周囲の人たちの協力が欠かせないのです。

また、病気の人に対する偏見を持たないようにするということが重要といえるでしょう。

誰でもかかりうる病気ということと、治らない病気ではないということを理解し、無用な恐れや、患者やその家族を蔑視することはぜひとも避けたいものです。

まとめ

ここでもう一度「ストレッサー、ホメオスタシス、ストレス性疾患の関係」を図でまとめましたので、おさらいとして確認しておきましょう。

私たちの周りには、常に数多くのストレッサーが存在しています。そして脳がストレッサーをキャッチしたとき、私たちの体ではホメオスタシスが機能し、ストレス状態から体を守ろうと防御体制をとるのです。その時の防御力を決定するストレス耐性は、各個人の資質や体格などにより異なっています。ストレッサーが本人にとって過剰だった場合、体がバランスを失いさまざまな症状となって現れてしまうのです。それが身体面に現れた場合は心身症になり、精神面に現れた場合は気分障害や不安障害となるのです。

ストレッサー、ホメオスタシス、ストレス性疾患の関係

ストレッサー、ホメオスタシス、ストレス性疾患の関係

しかしながら私たちは、ストレス耐性を強くすることにより、ストレス性疾患が発症するのを防ぐことが可能です。

それには、本人の対処行動によるストレスの解消や、周囲の理解や支援などが必要なのです。
多くのストレスが存在している現在、それこそが一番重要なことといえるでしょう。

次の項では、ストレスとうまく付き合っていくための方法をご紹介いたしましょう。