健康管理情報

筋肉をもっと知ろう! ~筋肉の基本② 筋肉が大きくなる仕組み~

2022年2月
更新)
筋肉をもっと知ろう

記載いたしました内容に一部誤りがございましたので、訂正しお詫び申し上げます。

人におけるサテライト細胞による筋線維の数の増加については、現時点においても確認されておらず、動物実験による報告がなされているのみとなっております。


2月は1年の中でも最も寒い時期です。みなさんは寒いとブルブルと身震いをすることがあるのではないでしょうか。それは、寒さから身を守るために、体内で熱を作ろうとして(熱産生)ために筋肉を震わせているからです。

今号では、前回に引き続き「筋肉」を取り上げます。筋肉の基本の第2弾として、「筋肉が大きくなる仕組み」について学習していきましょう!

筋肉

筋肉を大きくする必要性

私たちの身体を支える、手足を動かす、熱を産生するなどの重要な役割を持つ筋肉は、運動不足や寝たきり、骨折などの理由でギブスの固定をするなど、筋肉を一定期間使わない状態が続くと小さくなり、機能が低下します。そのため、筋肉を維持することや小さくなった筋肉は大きくすることが必要です。

筋肉が大きくなるとは?

筋線維が太くなる筋肥大

 筋肉を構成する筋線維1本1本の中では、筋原線維という「アクチン」「ミオシン」などのタンパク質がたくさん詰まった細長い糸のような繊維が数百から数千本から集まってできています。アクチンやミオシンは、筋肉の収縮に関わっています。

そして、筋原線維の本数や密度が増えることによって、1本の筋線維が太く、筋肉全体の断面積が大きくなるのが筋肥大です。

筋肥大の流れ

 筋力トレーニングなどの負荷により、筋線維に微細な損傷が起こると、筋線維からサイトカインや成長因子などが放出され、筋肉の修復や成長を助ける筋肉の幹細胞であるサテライト細胞が活性化します。筋肥大のためには、より多くのタンパク質合成能力が必要となるため、活性化されたサテライト細胞は筋肉再生のために、筋線維に融合し核を提供します。その結果、筋線維内に新しい核が増えることによって、筋タンパク質の合成が効率よく行われるようになり、アクチン、ミオシンなどの筋タンパク質が増え筋線維が太くなると考えられます。

●筋線維の数は増えない?

 筋線維は、大きな損傷時や再生が必要な場合に、新しい筋線維を作ることもありますが、基本的に生まれた時に、筋線維の数自体はほぼ決まっており、増えないとされています。

なお、人での確証はまだ得られていませんが、主にマウスなどの動物実験では、サテライト細胞が筋芽細胞へ分化し、新しい筋線維が形成され、数が増える現象が報告されています。

人での検証が難しい理由として、筋線維は非常に長く大きい細胞であるため、分裂の有無を確認し、追跡することが難しいことが挙げられます。さらに、倫理的、技術的な観点からも生検にも限界があるためとされています。

筋肉量の増加のポイントは「速筋線維」にあり

筋肉の種類には、大きく分けると「速筋線維」と「遅筋線維」があります。そして、筋肉量を効率よく増やすためには、「速筋線維」を積極的に動かすことが大切です。

速筋線維は、素早く収縮することができる筋肉で、瞬発力やパワーが必要な運動を行うときに活躍します。しかし、大きな力を瞬時に発揮することができる反面、持久力がなく疲れやすい筋肉です。また、筋肉が白っぽく見えることから「白筋」とも呼ばれています。筋線維の太さは遅筋線維に比べて、太くなりやすい特徴があります。

「速筋線維」と「遅筋線維」

効率よく速筋線維を鍛えるポイントは、筋肉トレーニング(無酸素運動)によって筋肉に大きな負荷をかけ、できるだけ短時間でかつ少ない回数でも疲れる重量で行うことです。

そして、トレーニングによって筋線維が傷つき、修復されるときに筋肉が徐々に大きくなるため、繰り返し行うことで効率的に筋肉量が増加し太くなりやすいといわれています。ただし、大きな負荷をかけるトレーニングは、大きなケガに繋がったり、血圧の上昇を伴うため注意が必要です。

 

マラソン選手は足が細い?

長距離マラソン選手は、短距離選手に比べ足が細いといわれることがあります。これには様々な理由が考えられますが、種目ごとの特徴やトレーニングよって使われる筋肉に違いがあるためだと考えられます。

長距離選手の場合には、長時間スタミナ切れを起こさないために「遅筋線維」がとても重要となります。これには、次のような理由があります。

遅筋線維は、ゆっくり収縮する筋肉で、瞬時に大きな力を発揮することはできませんが、酸素を蓄えるミオグロビンをたくさん含むため、持久力に優れているという特徴があります。そして、ミオグロビンを多く含むことから赤っぽく見えるため、「赤筋」とも呼ばれています。

また、遅筋線維は速筋線維に比べて太くなりにくく、体積が小さいことも特徴です。長距離選手は、筋肉の割合として遅筋線維の占める割合が多い傾向にあることから、かなりの運動量をこなしているにも関わらず足が引き締まり細い人が多いともいわれています。

マラソン選手は足が細い?

来月のテーマは、「筋肉をもっと知ろう! ~筋肉の基本③ 筋肉痛・筋肉が凝る仕組み~」です。